2016年3月16日水曜日

2016年3月16日(水)

5時、海を見に行く。辺りはまだ暗い。雲の隙間から星が見える。西の浜に立つと水揚げされた海苔の養殖資材から出るきつい磯の香りが時折漂ってくる。昨夜の北風は止み、穏やかな潮騒だけが聞こえている。沖に目をやると、仕事を終えた底引き網漁船が赤い航海灯を見せながら南の港へ向かっていくのがわかった。

香川県坂出市沙弥島にある海の家が現在の滞在先。目の前には瀬戸内海が広がっている。今週末320日に開幕する瀬戸内国際芸術祭2016に出品するため、ここで約1ヶ月滞在制作をしており、いよいよ制作も佳境を迎えている。

今回の作品は海上に設置するため、作品の見え方や展示設営に於いて、潮の満ち引きが重要なポイントとなる。今日の満潮は55分と1632分。干潮は1118分と2317分。

潮は1日に2回満ち引きがある。約6時間かけて潮は満ち、約6時間かけて潮が引く、これが1日に2回。それで24時間というわけだ。潮の満ち引きは月の満ち欠けと連動している。古代から人間は、月の満ち欠けの周期から暦をつくり生活に役立てるとともに、鑑賞の対象にしてきた。

潮の満ち引きは月の引力によって起こる。月の引力は、月に面した地球表面で最大となり、海水は月の引力に引きつけられ、盛り上がる。こうして海水が集まった場所が満潮となる。新月や満月になると、太陽と月と地球は一直線上に並ぶため、月と太陽の引力が合わさり潮の満ち引きが大きくなる。これが「大潮」。逆に半月の時は「小潮」となる。

以前に珊瑚の産卵を見に行った時、産卵は新月の夜だった。同行していた珊瑚の研究者の話では産卵は満月か新月の時で、大潮に乗せて卵をより遠くまで運ぶことが目的だと考えられているそうだ。人間も満月の時に出産しやすいという話も聞いたことがある。

この星の生物のはじまりが海からだとするならば、我々のDNAの奥深くには、潮のリズムが刻まれているに違いない。この星に生きる者として、自らのリズムを確認したい時、こうして、だれもいない浜辺で、月と潮に向き合うのもいいかもしれない。


筆名:五十嵐靖晃  年齢:37  都道府県:千葉県

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